君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
 街で、創とその女の子が楽しそうに手をつないで歩いているのを一度、偶然見かけたけど、俺の心は驚くほど穏やかだった。

 唯、創の隣を歩いているのが、茜じゃないと言う事実に、違和感は持ってしまったけれど。


 
 何で、創の隣にいるのが、茜じゃないんだろう?


 それでも。

 俺がこのとき、あまり腹が立たなかったのは、創の笑顔が茜と一緒にいるときの蕩けるようなものではなくて、対他人用のものだったからだと思う。


 それでも、もう。俺は創に茜を任せる気なんて、なかったけど。


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