君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 俺としても、茜がうちに入ってきてくれるのは、本当に嬉しいんだけど。かといって、無理強いをするつもりは、今のところ俺にはなかった。

 なぜなら、きっと茜はここに入ってくるだろうって言う、確信があったから。
 俺はそれまで待つつもりだった。



「よっ―――あ、タケ!明弘もいたのかっ、明弘久しぶり。また歌いに着ちゃったんだけど、ごめんな」


 明弘が入ってきたドアが、勢い良く開いて、茜がひょっこりとその顔を出した。

 その声は元気で、俺は安心する。
 一時期の空元気でもなくて、茜は本当に元気にしているんだと、俺は思っていた。


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