君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 やっと認めることができたその感情は、たちの悪い麻薬のようにこの頃の俺の思考回路を、麻痺させていた。


 このとき、俺は茜はもう元気なんだと思っていた。
 創のことを訴えに着た、あの一ヶ月前の日から俺は創がいないときは、ずっと茜の傍に居るようにした。


 だから、俺は茜のことを元気にさせることが出来たんだと思い込みたかったのかもしれない。

 だから、気付いていなかった。


 茜が必死に保っていた、その虚構の仮面に、気付くことができなかったんだ。



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