君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
擬態


 おれを好きだと言ってきた少女は、ふわふわの長い髪に、真っ赤なマニキュアをいつも塗っている、大きな瞳が特徴的な可愛らしい子だった。


 ふわふわの長い髪も、短い制服のスカートから露出した華奢な足も、綺麗にメイクを施した、その小さな顔も。


 そのすべてが茜が何年も前に拒絶して、拒否してきたものばかりだった。


 それだけで、おれはこの少女を一瞬憎いと思い、そんな自分の思考回路を異常だと、じわじわ感じた。


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