君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
ここでタケに嫉妬するなんて、そんなの、あっちゃいけない。
おれはざわめきたがる胸を押しとどめるのに精一杯で、茜のことを考える余裕がなくなりつつある自分を知った。
「うん、あのさ。今度、俺が入ってから初めてのライブが決まったんだよ。
ほら、前そうと見に行っただろ?あのライブハウス。
春休みに入る前の前夜祭なんだ、今度は。そう、見に来るよな?」
茜の大きな瞳が、不安そうに揺れていた。
おれは、結局いつまでたっても、頼みごとを断ること、特に茜のお願いには弱かった。
「――いいよ、見に行く。当たり前だろ?美羽誘って、二人で行くよ」
「―――んだよ。そうのデートのだしに使われてるみたいじゃん」