君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

邂逅


 思えば、おれはとにかく物心ついた頃から、異様に自分に自信が持てない子どもだった。


 大人の顔色を常に伺い、おどおどと行動する子どもで、その態度の所為で余計に眉をひそめられ、それによって自分が何をすればいいのか分からなくなってしまう。

 そんな悪循環に常に見舞われていた。


 成長しても、自分に自信がないのは相変わらずで、表面上をにこやかに取り繕う術は覚えても、いつも何かに怯え続けていた。


 他人に嫌われたくないから、誰にでも優しくした。

 頼みごとを断れないのも、物事を決断できないのも、すべて自分の判断に自信が無かったからだ。


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