君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

「……そうだなぁ、すごく、可愛いよ。どっちかと言うと、顔立ちは美人かもしれないけど、性格は可愛い感じかな」


「惚気やがって、いいよなぁ。どこで知り合ったんだよ?
 ってゆうか、いつから付き合ってんの?」


 素直にうらやましそうな顔をした明弘に自分で言い出したくせに、胸がつきんと痛んだ。

これが、本当だったら良かったのに、なんて、そんなことを思ってしまう。
 曖昧に笑った俺をどう解釈したのかはわからないけれど、明弘は追及をやめて、とりあえずおめでとう。とだけ言い残して、俺とは反対の角で楽譜とにらめっこをしている保のほうへと向かっていった。


< 333 / 395 >

この作品をシェア

pagetop