君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

「ちょっと、過保護な彼女の兄貴に叩かれちゃったんだよね、いたずらが過ぎるって」


「え、おまえ女いたのかよ! ずっとフリーだっつってたくせに」


 拗ねたようにそう言った明弘に、べしっと頭をはたかれた。
 本人は軽くのつもりなんだろうけれど、それでも叩かれれば痛い。

 抗議のつもりで睨みあげたのに当の本人は全く気にせず、なぁ彼女可愛い? どんな子だよ、とせっついてきた。
 こうなってくると、明弘はしつこい。ため息ひとつで俺は口を開いた。

< 332 / 395 >

この作品をシェア

pagetop