君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―
おれと茜は、なんとも言えない気まずさを持ったまま、けれどそれをお互い問い詰めることもできないまま。
おれたちは三年生になった。
――そう、あと一年なんだ。
それは、おれが無条件に茜の横に立っていられるかもしれない時間の終わりだった。
あの春休みの前にあった出来事のすべてがなかったように、茜は振舞って見せていた。
そしておれはそんな茜が取り繕ってくれている日常を壊す勇気が出ないまま、美羽とともに居続けていた。