君の匂いを抱いて祈った。―「君が幸せでありますように」―

 にこと笑った茜の笑顔がとても大人びてみえた気がして、おれは少し戸惑ってしまう。
 勘ぐり過ぎかとも思いながらも、思考はいつだって止まらない。


 ――なぁ、なんでそんな顔、すんの? おれが知らない、おれが作り出したんじゃない、顔で。


 くだらない、汚い感情だと分かってる。
 だから、おれはいつだって、それを覆い隠して柔らかく笑うんだ。茜が好きだって言うこの笑顔で。


「―――あぁ、おれもそう思う。茜と一緒が、一番楽しいから」

「だよな! 俺らってホント親友だよなって、最近つくづく思うんだよなぁ」


「こら、お前らいつまでしゃべってるんじゃないよ。ホームルーム始めるぞ」

< 376 / 395 >

この作品をシェア

pagetop