約束のエンゲージリング
それが〝妹〟に対する優しさだと理解はしているが、とてつもなく残酷な優しさだ。
こんな苦しい思いをするぐらいなら早く着いて欲しいという思いと、もっと彼の横を歩きたいという本音がぶつかり合って帰り道はいつもモヤモヤとしている。
そうこうしている間にアパートに着いた。
アパートの前で一度立ち止まってから彼に声を掛けた。
「じゃあ、私はこのまま孝兄の家に行くね。もう家も見えてるから本当にここまででいいから!じゃあマサさん、また明日ね。」
少し強めな口調で言葉を掛ける。
こうでも言わないと彼はアパートの先にある孝兄の家まで送ろうとするから。
『、、分かったよ。じゃあ孝と沙羅ちゃんと由羅ちゃんに宜しく言っておいて?千佳、今日もお疲れ様。また明日。』
「うん、マサさんもお疲れ様でした。じゃあ。」
諦めてくれた彼にホッとしながらも少し寂しさを感じて、急いで背を向けて彼から離れた。
アパートと孝兄の家は4件隣で数メートル先なだけだ。
だから1分も掛からずに到着する。
少し視線を感じてアパートの方を振り返ると、彼がこちらを見守っていた。
「っ、、、、!」