約束のエンゲージリング


そして彼に背を向けてまた雪駄を履き始めた。





「、、何でもいいなら適当に買ってくるね!」


そう声を掛けて急いでドアノブに手を掛けるがそれを阻まれるように手首を強めに握られた。











『、、もしかして無かったことにしようとしてる、、、?』




怒りを隠す事なくドス黒いオーラを振りまいて低く一言呟いた彼。

握られた手首にはより一層力が込められた。






彼の為にそうしてるのに何故こんなに怒られているのか分からない。


それでも負けずに笑顔で振り返って平然と答える。







「何が?マサさん、私だってもう25だよ。こういう経験の1つや2つくらいあるよ?、、マサさんもそうでしょ?〝魔がさした〟なんて事くらい誰だってある事だよ。だから、、気にしないで大丈夫だから。」



嘘がバレないように出来るだけ淡々とした口調で声を掛けるが、私の言葉に徐々に表情を歪める彼。

それを見るのが耐えられずに最後の方には視線を逸らしてしまう。







そんな顔しないで欲しい。



そんな、、傷ついた表情が見たい訳じゃない。













『じゃあ千佳は〝魔が差した〟から俺に抱かれたって事?』




彼の確信的な一言に全身が沸騰するように熱い。


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