約束のエンゲージリング









泣きながら抱きついてきた彼女を振り払う事も抱きしめ返す事も出来ず、ただ呆然と立ち尽くしていると作業場の方から物音がした。

慌ててそちらに視線を向けると作業場と店の境目のドアの隙間から彼女の傷ついた表情が見えて抱きついている彼女から距離を取ろうとするが時すでに遅く、愛しい彼女は作業場を飛び出してしまった。


追いかけようにも、そもそも最低な自分にそんな資格も無いがして動けずにいた。






その間にも今まで大事にしていたモノが音を立てて崩れていく。







「、、抱きしめ返してはくれないんだね。それが正巳の答え?」

『、、、、ごめん。』





小さく謝罪すると抱きついていた彼女は離れ、綺麗に笑った。


「困らせたかった訳じゃないのっ!ケジメがつけたかっただけだから!!、、私ね、この街から引っ越すことにしたの。心機一転してまた新しい生活を始めようと思ってね。だから最後に正巳に会いにきた。こうなるって分かってたからね。私は前に進むよ!、、、正巳は、、?このままでいいの?こんな事、私が言うのもなんだけど今の彼女は知ってるの、、?正巳に忘れられないヒトがいるって。」

『、、知らないだろうね。彼女には今後も言うつもりもないから。』









25年あんなに大事にしてきたのに結局、傷つけることしか出来なかった。



「それって、、ずっと言わずに付き合っていくって事、、、?女はね?どんなに優しくされても大事にされていてもそういうのって分かっちゃうものなんだよ。あの子にも私みたいな思いをさせるの、、?」




先程まで笑っていた彼女だったが、急に怒りを宿った真剣な目に変わり責め立てる。

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