約束のエンゲージリング
まるでリングケースを私に託すように渡すと、急に背を向け小さく呟いた。
「それ、貴方から正巳に直接渡しておいて?どうせ別れを告げに会いに行くんでしょ?私は、もう二度と会う事は無いから。」
女性の泣いているような背中に胸が締め付けられて咄嗟に手を伸ばせば、その手はすり抜ける。
一歩前へ進んだ女性は振り返って、とても優しい顔をしていた。
「私こう見えて結構意地悪なの。だって悔しいでしょ?でも、、正巳には幸せになって欲しいからヒントだけあげるわ。酷く乱暴に私を抱いた日に呼んでいた名前の頭文字とエンゲージリングに刻まれた名前の頭文字は同じ。つまり同一人物よ。」
「同じヒト、、?」
「そう。だからそのエンゲージリングも正巳も私のモノじゃない。今も昔も正巳の心はずっとその子のモノよ。その答えは貴方の中にあるわ。私の言葉を思い出しながらちゃんとよく考えてから正巳に会いにいくといいわ。、、後悔しないようにね!じゃあさよなら〝鈍感なちかちゃん〟!!正巳の事は頼んだわよっ!幸せにしないと許さないからっ!!」
そう言って最後に魅せたはにかんだ笑顔はとても綺麗で、背を向けてカツカツとヒールを鳴らしながら去っていく後ろ姿に目が離せなかった。