約束のエンゲージリング

それ以外の理由が分からなくて彼に問いかけると、スッと頬に彼の手が触れた。

幼い頃はよくこうして頬を撫でられていたが、年齢が上がるにつれ彼が私の頬を撫でることは無くなっていた。


だから随分と久しぶりの彼の行動に驚く。









『そんなの決まってるでしょ?千佳が無自覚だからだよ。さっきから視線が鬱陶しいしね。まぁ、大丈夫。今日は俺がついてるから安心してはしゃいでいいから。』

「う、うん?分かった!」

『、、絶対分かってないと思うけど、、。』









流し目でチラリと周りに視線を向けた彼だったが、私の返答に呆れたような溜め息をついてグイッと少し乱暴に手を引いた。











『じゃあまずその店から見てみようか?』

「うんっ、、!」





笑顔で彼と1番近くの店に駆け出した。


























「なぁんだ、、。恋人とデートだったんだ。そりゃそうだよね〜〜〜。」

「でも結構年の差のカップルじゃない?もしかして兄妹だったり?」

「いやいや、あの雰囲気じゃ兄妹じゃないでしょー。それにあのイケメン、周りの男達に睨みきかせてたし。ワザと見せつける感じじゃなかった?あれは絶対牽制してたでしょ。確かにあれだけ美人で若い彼女なら心配にもなるよね。」

「ま、、どのみち私達の出る幕はないね。だって凄いお似合いの〝美男美女カップル〟だもん。」

「ほーんと。私もあんな大人でイケメンで溺愛してくれる彼氏欲し〜〜〜〜!!」









私達が店に入った後に彼を見ていた女性達がそんな会話をしていたなんて知るよしもなかった。



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