約束のエンゲージリング


通されたのは奥の個室。



2人で使うには少し広すぎるくらいのテーブルの上には、カードが添えてある。

そのカードを覗き込むと書かれていた文字に目を見開く。












〝happy birthday CHIKA〟






「えっ、、、?大事な用事って、、。」



驚いて彼を見ると、そのリアクションに嬉しそうに笑った。

そして椅子を引いて、そこは座るように促して私が座ったのを確認すると自分も向かいに座った。









『25歳、おめでとう千佳。大事な用事ってのは勿論、このディナーの事だよ。千佳には本当に毎日助けられてる。うちってスタッフは千佳だけだからかなり負担を掛けてるよね。休みだってない。それなのに愚痴1つ溢さず真面目で仕事にも前向きに取り組んでて、そんな頑張ってる千佳にささやかだけどサプライズディナーだよ。予約してた時間よりも少し遅れちゃったけど問題ないみたいだし、美味しいディナーでも堪能しようか?』



彼からのサプサイズに返す言葉が見つからない。






あんなに急いでいたのは私の誕生日を祝う為のサプサイズディナーだったなんて。




絶対に涙を見せないと決めていたのに、ボロボロと涙が溢れてくる。

人って、、嬉しくても涙が流れるんだって今日初めて知った。






涙を流す私を目にして慌て始める彼。






『千佳っ、、泣かないでっ、、?サプサイズには成功したけどまさか泣き出すなんて予想外だよ。ほら、笑って?いつもみたいに無邪気に笑う千佳が好きだよ。』


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