約束のエンゲージリング
『、、分かってる。ちゃんと今まで通りに接するよ。千佳があれだけ頑張ってくれたのに俺がこんなんじゃ気に病んで進めなくなるもんな。千佳は本当に優しい子だからね、、。』
「思い残す事なく懺悔できたなら帰るぞ。」
『結局、孝も優しいよね、、。いつも助けてられてばかりだよ。俺は何も返せないね。』
「、、何いってたんだ。それは俺のセリフだろ?マサにはいつも助けてられてる。だから力になってやりたいんだけどな、、。こればっかりは自分で気づかないと意味がない。」
何やら意味深な事を呟いてポンと肩を押され目を細めた孝。
『孝、、、?それどういう、、「明日もお互い仕事だろ。帰るぞ。」
強めに言葉を被せられ、背を向けられた。
視界にはちょうど時計が目に入って、慌てて会計をした。
『っ孝、、ごめん!こんな時間まで付き合わせて。沙羅ちゃん達大丈夫かなっ!?』
「大丈夫だろ。何かあったら電話するだろうしな。じゃあまたなマサ。話ならいつでも聞いてやるから溜め込むなよ?」
『、、ありがとう。じゃあまた。それと本当にごめんな、、。』
最後にもう一度謝って孝とは別れた。
深夜にアパートに戻ると、当然二階の部屋は真っ暗で部屋に入っても上の部屋からは物音もしない。
眠っているのだろうか。
それとも静かに涙を流しているのだろうか。
彼女が泣いている姿を想像すると胸が張り裂けそうになって今すぐにでも彼女を慰めに行きたい、、そんな気持ちに蓋をする。
彼女を傷つけておいて俺がこんな気持ちになるのはおかしい。
彼女には俺なんかより若くて誠実でそれでいて純粋でいい男がいるのだと言い聞かせながら乱暴に目を閉じた。
それでも今日は眠れる気がしない。
目を閉じると彼女の顔が浮かんでくる。
最後に見せた綺麗な笑顔が、、、、。