約束のエンゲージリング
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「ん、、孝?おかえり、、。」
「悪い、起こしたか?」
「ううん、大丈夫。それよりも飲みに行ってた相手ってマサくんだよね?千佳とマサくん、、もしかして何かあった、、?」
マサと別れてシャワーを軽く浴びた後にそっと布団に入ると愛しい妻が目を覚ます。
妊娠すると眠りが浅いらしいが、彼女が目を覚ました理由は他にもあるのだろう。
実の妹のように可愛がっている千佳の事。
毎年のようにこの家で祝ってきた誕生日。
それが初めて他との約束を優先した妹。
それに成長を感じると共に寂しさも感じたらしく今日一日ソワソワと落ち着かない様子だった彼女。
マサから電話で呼び出され、行き先も会う相手も伝えずに出かけてくると言うと急に表情を変え心配そうな表情を浮かべた。
それは浮気を疑っているわけじゃない。
きっとすぐに分かったのだ。
電話の相手が誰で、千佳に何かあったのだと。
血の繋がりのない〝妹〟だというのにここまでの愛情には驚くと同時に妻が愛おしくて抱きしめずにはいられない。
両親を事故で亡くし、それからずっと俺ら兄妹を側で支えてくれた彼女。
彼女と付き合って10年目、25歳という結婚適齢期を迎えた時に別れを覚悟に〝妹がハタチになるまで結婚はできない〟と告げた。
その時、妹はまだ10歳で普通ならこれだけ長い間待たせておいて、更に10年も待たせる男なんて願い下げだと罵倒する所だろう。
だが彼女は違った。
〝私だってそのつもりだよ〟とクスクスと呆れたように笑ってみせたのだ。