ブラック研究室からドロップアウトしたら異世界で男装薬師になりました
「殿下、この男は妙ですよ! 悪魔に憑かれてるのかも。早く帰りましょう!」
「僕はもう少しいたいな。この家、ちょうどいい広さだし。ラウル、先に帰っていいよ」
私は椅子を持ち上げた。
「いいからまとめて帰れ!」
ミカエルとラウルが帰っていき、日暮れた頃。父が帰宅した。塩にまみれた客間を見て、彼はギョッとする。
「な、なんだいこれは。悪霊でも出たのか」
セバスチャンと共に客間を掃除していた私は、鬱々と答える。
「……ミカエル王太子が来ました」
「ミカエル様が? なんと」
「ついでに女だとバレました」
「おお……」
お通夜モードの私を見て、いつも和やかな父が顔を引きつらせた。さもありなん。このままでは仕官の道が危うくなるかもしれないのだ。
「ただいまー、ってなにこれ」
兄は、塩まみれの客間を見て父と同じリアクションをしている。私は、王太子に女だとバレたことを話した。
「そりゃあ運が悪かったな。どんまい」
兄は至極軽い返答をよこした。兄くらい楽観的だったら、人生楽だろう。
掃除を終えた私は、兄の部屋でため息をついていた。軽装に着替えた兄は、肩あたりまである髪をかき上げる。女装するために、彼は男にしては長髪だ。
「そんなに落ち込むなよ。バレたからって死ぬわけでもなし」
せっかく十年間性別を隠してきたのに台無しだ。
「……ねえ、兄様は王太子様とよくお会いするでしょう。どんな方なの?」
「そうだなあ。あまり人に心の内を見せない人かな。〝氷の王太子〟って呼ばれてる」
その二つ名は、先ほどまで話していた彼のイメージとそぐわない。私はメモ帳を手に兄を詰問した。
「僕はもう少しいたいな。この家、ちょうどいい広さだし。ラウル、先に帰っていいよ」
私は椅子を持ち上げた。
「いいからまとめて帰れ!」
ミカエルとラウルが帰っていき、日暮れた頃。父が帰宅した。塩にまみれた客間を見て、彼はギョッとする。
「な、なんだいこれは。悪霊でも出たのか」
セバスチャンと共に客間を掃除していた私は、鬱々と答える。
「……ミカエル王太子が来ました」
「ミカエル様が? なんと」
「ついでに女だとバレました」
「おお……」
お通夜モードの私を見て、いつも和やかな父が顔を引きつらせた。さもありなん。このままでは仕官の道が危うくなるかもしれないのだ。
「ただいまー、ってなにこれ」
兄は、塩まみれの客間を見て父と同じリアクションをしている。私は、王太子に女だとバレたことを話した。
「そりゃあ運が悪かったな。どんまい」
兄は至極軽い返答をよこした。兄くらい楽観的だったら、人生楽だろう。
掃除を終えた私は、兄の部屋でため息をついていた。軽装に着替えた兄は、肩あたりまである髪をかき上げる。女装するために、彼は男にしては長髪だ。
「そんなに落ち込むなよ。バレたからって死ぬわけでもなし」
せっかく十年間性別を隠してきたのに台無しだ。
「……ねえ、兄様は王太子様とよくお会いするでしょう。どんな方なの?」
「そうだなあ。あまり人に心の内を見せない人かな。〝氷の王太子〟って呼ばれてる」
その二つ名は、先ほどまで話していた彼のイメージとそぐわない。私はメモ帳を手に兄を詰問した。