Legal office(法律事務所)に恋の罠 *番外編~ジェラシーは内密に~
真実を一刻も早く知りたいという奏の思惑に反して、奏の午後の業務はビッシリと詰まっていた。

会議や接待の合間に社長室に戻るが、パーティションで仕切られた向こう側の弁護士執務室に和奏の姿はない。

胸の中の不安は大きくなる一方だったが、奏も成熟した大人であり、仮にも敏腕社長と謳われる男だ。

仕事を疎かにするわけにはいかない。

会議を終えた15時過ぎ。

奏は、小さくため息をつくと、社長室から見える階下の街並みを眺めた。

コンコン

「失礼します」

ノックの音と共に、一人の女性が社長室に入ってきた。

書類を手にした女性は金丸紫織(かねまるしおり)

宇津井に荷担して奏を陥れようとした重役秘書、丸山美佐紀の代わりに採用された。

「奏くん、お疲れのようね」

メリハリのあるボディにタイトなスーツは、ある意味丸山と被るが、金丸は仕事熱心で、男関係はクリーンだ。

奏は振り返り、紫織の差し出す書類を受け取る。

「あら、奏くん、肩に埃が・・・」

紫織は奏に近づくと、そっと肩に手をのせて埃を払おうとした。

その直前に、紫織が爪づき奏の胸に飛び込む形になった。

「ごめんなさい」

「いや、気をつけて」

紫織は離れると、パーティションの向こうに目をやった。

透明のパーティションの向こうに、こちらをじっと見つめる和奏の姿が見えた。


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