片想い同盟
ガタンと椅子をひいて前の席に座った拓海は、そのまま体を後ろの私の方へと向ける。
「……」
「……なに」
「いや」
近い距離なのに、いつものようなバカみたいな会話はない。
私も拓海も目も合わせない。けれど、2人の視線はなんとなく窓の外。
「私、初恋だったんだよねー」
「あー……、俺もそうかも」
抑揚もないトーンでの会話。それでもこんなにも落ち着いていられる。
「つか、初めて女に興味持ったし」
「うわ、なにそれ。嫌味?」
「バーカ、違ぇよ」
クスリと小さく2人で笑った。
朝のガヤガヤした教室内。
誰も、私と拓海が昨日失恋したことなんて知らない。
私たちだけが知ってる、私たち2人の出来事。