片想い同盟


ガタンと椅子をひいて前の席に座った拓海は、そのまま体を後ろの私の方へと向ける。


「……」

「……なに」

「いや」


近い距離なのに、いつものようなバカみたいな会話はない。


私も拓海も目も合わせない。けれど、2人の視線はなんとなく窓の外。



「私、初恋だったんだよねー」

「あー……、俺もそうかも」


抑揚もないトーンでの会話。それでもこんなにも落ち着いていられる。



「つか、初めて女に興味持ったし」

「うわ、なにそれ。嫌味?」

「バーカ、違ぇよ」


クスリと小さく2人で笑った。


朝のガヤガヤした教室内。

誰も、私と拓海が昨日失恋したことなんて知らない。

私たちだけが知ってる、私たち2人の出来事。



< 147 / 341 >

この作品をシェア

pagetop