片想い同盟
「……っ、おい!杏になにしてんだよ」
どこからやってきたのか、息を切らした誰かが、私から中山くんを引き離してくれた。
その声だけでも、誰だかなんてすぐにわかる。
「なっ、なんで唐沢拓海がここにいるんだよ」
「んなことどうでもいい。それよりお前、なに勝手に杏に触ってんの?」
珍しく怒っているその人……拓海は、そう言って私の腕をぐいっと引くと、そのまま私をその腕の中におさめた。
え、え……?
いまこの状況に追いつくのだけで精一杯。
拓海、来てくれたの?
その事実だけでこんなにもホッとした気持ちになるのは、どうしてなんだろう。