片想い同盟


……うーわ、きもいな、俺。

今さらながらにそんなことを思う。


自分の知らない自分を見てるみたいで、なんだかくすぐったい。



「あれ、もしかして、拓海くん?」


会場を出ようとしたところで、誰かに名前を呼ばれた。


振り返るとそこにいたのは、どこかで見たことがあるような女。


「あ……っと、おー。久しぶり」


名前を呼ばれた手前、知り合いなのはたしかだと思うんだけど。

やべぇ、名前とか全然覚えてない。


「久しぶりだね〜。元気にしてた?……って、あれ、もしかしてカノジョ!?」


変にわかるふりをして挨拶してしまったばかりに、その女は馴れ馴れしく話しかけてきた。

挙句に後ろにいた杏にまで目をつけて、覗き込んでくる始末。


< 248 / 341 >

この作品をシェア

pagetop