片想い同盟


「なぁ、このあと、空いてる?」


お疲れの一言でも言えばいいものを、俺の口からまず出た言葉はそれだった。


自分が思っている以上に、俺は今、杏とのこの関係に焦っているんだと思う。



「……なんで」

「話がしたいから」


杏とこんなぎこちない会話をしていることがたまらなくもどかしい。

俺と杏のいまいる位置だって、離れすぎだ。



「なぁ、頼むから……」

「あっ、いたいた〜!唐沢せんぱーい!」



頼むから、話をさせてくれ。と。


そう言おうとした俺の言葉は、お化け屋敷の出口から出てきた女生徒の甘ったるい声にかき消された。


< 315 / 341 >

この作品をシェア

pagetop