お試しから始まる恋
冬子が殺されたのは高校2年生の夏。
一ケ月休んで冬子として楓子が来たのは秋だった。
その時から気になっていた颯。
ずっと颯が11年思い続けていたのは、楓子だった・・・。
純也が奪った手紙を読まずにそのまま送ってくれた。
そのお陰で一番知りたかったことが知れて、颯は喜びを感じていた。
それから約束の日曜日。
楓子はあれから仕事を休んでいた。
体調がすぐれず、すっと臥せっている。
1人暮らしで食料は何とか買い出しには行けているが、ほとんど何も作れないまま喉越しの良い物を食べるだけだった。
数日で、少し痩せてしまった楓子は、颯に約束の日には会えない事をメールで伝えた。
理由を聞かれて、体調がすぐれない事を伝え風邪を引いているようでうつしては申し訳ないと伝えた。
颯は納得したようだった。
お天気の良い日曜日。
楓子はパジャマのまま部屋で寝ていた。
ピンポーン。
チャイムの音に、楓子は目を覚ました。
ピンポーン。
再びチャイムが鳴り、楓子は起き上がり1階へと降りて行った。
1階のリビングで、モニターに映る来客を確認すると、楓子は驚いた。
モニターには颯が映っていた。
どうして家が判ったのだろう・・・前に送ってもらった時に知られたのだろうか?
途中で降ろしてもらったし・・・
今日は会えないと断っているのに・・・どうして? ・・・
ピンポーン。
またチャイムが鳴った。
「はい・・・」
ボタン押して返事をす楓子。
(あ、ごめん。体調良くないって言われたけど、心配できてしまったんだ)
なんで心配なんかするの?
楓子の目が潤んだ。