お試しから始まる恋

「俺、今日からここに住んでもいいか? 」

「え? 」


「だって、離れたくないし。お前1人にしておくのは、心配だから」

「そんなに急に、いいのですか? 」

「全然かまわないぜ。お腹の子にも、栄養のあるもの食べさせてあげたいからな」


 楓子はもう、何も言う事はなかった。

 心から幸せだと思える。



 ずっと、妹の冬子の事件を追ってきた楓子。

 刑事になって真相をつきつめ、冬子を殺した奴らを逮捕すると決めていた。

 だが、結局2人とも殺されてしまい真相は明らかにならなかった。


 本当に楓子が知りたかったことは手に入らなかった。


 でも。

 冬子が殺されて、入れかわって楓子が冬子になって総有高校へ編入した。


 それがきっかけで颯に出会えた。

 そして今こうして、隣にいてくれる・・・。


 もしかしてこれは、冬子が引きあわせてくれたのかもしれない。

 楓子はそう思った。






 その後。

 颯は一旦荷物を取りに自宅へ戻ってから、すぐに楓子の所に戻て来た。


 楓子はずっとパジャマだったので、私服に着替えた。

 
 ゆったりとしたピンク系のロングワンピースに、白いソックス。

 背の高い楓子が着るとスカート丈が膝下になってしまう。


 スカート姿の楓子を見ると、颯は可愛くてたまらなくなった。




 楓子は和室へ颯を案内した。


 父と母、そして冬子の遺影が置いてある部屋。


 颯は写真の冬子を見て、何となく楓子とは違うと感じた。

 マスクをして顔を隠していたらそっくりだが、素顔のままでなら違いが判る。


「ねぇ楓子。冬子が俺に、渡そうとしていた手紙の事知っているか? 」

「はい、それが原因で事件が起こったので」

「その手紙。実は、俺に送られてきたんだ」

「え? 」

 
 
 


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