お試しから始まる恋
颯は手紙が送られてきた封筒を楓子に渡した。
楓子は封筒の中を見た。
その中には、冬子が颯に送った手紙が入っていた。
手紙に目を通すと、楓子の目が潤んできた。
「冬子・・・私の為に? 」
楓子の頬に涙が伝った。
「冬子は、俺にお前の事を紹介したくて手紙を書いてくれていたんだ。でも、勘違いしてあいつらが奪ってしまった。だが、奪った手紙は読まずにずっと11年未開封のままだったんだ」
「私が、冬子に貴方の事が気になるって話をしていたので・・・」
「有難うな、俺の事気にしてくれて」
「別の学校でしたが。冬子の事を時々迎えに行って、貴方の事を見かけました。外見は、シレっとして俺様みたいな感じでしたが。なんとなく、私には貴方の心はとても暖かくて優しい感じがしました」
「楓子・・・」
颯がそっと、楓子を抱きしめた・・・。
「俺が同窓会でお前に声かけたのは、きっと運命だったんだな。あきらめきれなくて、探して、お前に会えた時は嬉しくて泣きそうだったんだ」
「あの日。貴方が検察局の前に現れた時、びっくりしました。どうしているの? って・・・。ずっと、徹夜が続いていて、あの日はやっと早く帰れた日だったんです」
「それでなんだな。驚いて、倒れちゃったのは」
「すみません・・・」
「落ちた手帳見た時は、驚いたけど。すげぇ尊敬したよ。あれから、頑張っていたんだって。でもいつか、お前の口からちゃんと聞くまでは知らないふりをしようって決めたんだ。ただ、何か1人で抱え込んでいるのは感じたから。父さんに相談していたよ」
嬉しくて、涙が溢れて・・・
楓子は言葉が詰まってしまった。