お試しから始まる恋

「楓子、愛しているよ」

 颯が優しく楓子の髪をすくってくれる。

「俺、あの時。高校2年の秋に、初めてお前に声かけて判らないところ聞いただろう? その時、マスクで顔隠していたけど。なんとなく、隠れたマスクの下でお前が微笑んでいるのを感じたんだ」

「・・・はい。あの時、本当は嬉しくて。・・・ずっと、憧れていた人から話しかけられたから。・・・でも私は冬子だから・・・。そう思って、あえてそっけなくしてしまったんです。でも、マスクの下でちょっとだけ笑っていました」

「そうだったのか。あの声をかけた時から、ずっと俺はお前の事想ってたよ」

「私も・・・同じです・・・」


 照れている楓子を、颯はそっと抱きしめた。

「俺達って、ずっと両想いだったんだな。すっごく遠回りしたけど。今こうして、お前の事抱きしめていられるし。これからずっと一緒にいられるなんて、嬉しくてたまらない」

「はい、私も同じです。・・・この敬語は、すぐには変わりませんが。言葉がどうであっても、私の気持ちは変わりませんから」

「ああ、俺も自分の感覚を信じているから」


 そっと、見つめ合う2人。

 お互いが引き寄せられ・・・唇が重なった。


 






 

 それから・・・・

 5年の月日が流れた。


「バーン! バーン! 」

 元気な男の子の声が部屋の中で響いている。

 颯によく似た顔立ちの可愛い男の子。

 この子は颯と楓子の子供で、名前は柊(ひいらぎ)。

 風の強い日に産まれたからつけられた名前である。

 現在4歳になった柊は、幼稚園に通っている。


「ママ、おやつ」

 小さな椅子に座って、可愛いリボンを付けた女の子がいる。

 この子は颯と楓子の第二子で名前は茜(あかね)という女の子。

 夕焼けが綺麗な時に産まれて茜とつけられた。

 顔立ちは今は楓子と似ている感じが強い。








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