俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
最初に向かったところは水族館だった。館内の薄暗い中を示された順路通りにふたりで並んで歩く。
立ち止まった大きな水槽では、三匹のイルカが体をしなやかにくねらせてそれぞれが思い思いに泳いでいた。優雅で自由で、観ているだけで癒される。
「百音って、イルカにちょっと似てるね」
「えっ、イルカ? 言われたことない」
ガラスに映った涼真を見ると目が合った。
「神聖な感じがするというか、触れちゃいけない気がするんだけど、でも親近感もちゃんとあって。うまく言えないけど、まぁ可愛いってことかな」
「か、可愛いって……」
周りに人がいる状況で、こんな甘ったるい言葉を言われるとは思わなかった。頬が熱くなり、薄暗い中でも赤く染まっているのがバレそうな気がして、思わず俯いた。
こんな風に恥ずかしげもなく気持ちを表現してくれる人が、ほかの人に心が揺れ動いているわけない。そう思う。なのに……。
「じゃあ、次はショッピングに行こっか。百音に似合う服、選んでもいい?」
「うん、お願い」
涼真を好きだと自覚すればするほど、不安は大きくなっていく。
私でいいの? デート、楽しい?
聞きたいけれど聞けない疑問は、そっと胸の奥にしまった。