俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛


強く反論してくれることを嬉しいと思うのに、やっぱり納得できずにいる。あの日、見た光景が忘れられずにいるからだ。

「つい最近、新野さんの事務所に忘れ物を届けにいったことがあったの。そうしたら涼真がいた」

「えっ、そうなの? 声かけてくれればよかったのに」

「仕事中だったし。それに……背が小さい女の子とすごく楽しそうに話してたから」

言葉にしながら、これは嫉妬だと自覚する。それでも、不安は止められない。

「そのとき“やっぱ、いいね。話が合うって。同じ仕事してるのって大きいよなぁ”って、涼真が言ってたから」

一言一句覚えている自分が恥ずかしい。それくらい、耳について離れないでいた。

「なんだ、そのことか」

「っ、なんだって……」

「それは、その背が小さい後輩のこなっちゃんに言った言葉だよ。あの子、新野さんの婚約者だから」

「えっ!? 新野社長の?」

あの強面でいつ見ても真顔の新野社長が?

思い出して見れば、涼真を見かけたとき、新野社長はにっこりと微笑んでいた。それも、あの女性に向かって。

「そうだったんだ……」

新野社長の笑顔の理由がわかり、納得する。

「そ。いろいろふたりのエピソードとか聞いてて、“いいですね、おアツいですね”的な意味でいったの。全っ然、“うらやま~”なんて思ってないからね?」

「私が勝手に決めつけてたんだね」

もう、そういうのはやめようと思っていたのに。


< 110 / 123 >

この作品をシェア

pagetop