俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
強く反論してくれることを嬉しいと思うのに、やっぱり納得できずにいる。あの日、見た光景が忘れられずにいるからだ。
「つい最近、新野さんの事務所に忘れ物を届けにいったことがあったの。そうしたら涼真がいた」
「えっ、そうなの? 声かけてくれればよかったのに」
「仕事中だったし。それに……背が小さい女の子とすごく楽しそうに話してたから」
言葉にしながら、これは嫉妬だと自覚する。それでも、不安は止められない。
「そのとき“やっぱ、いいね。話が合うって。同じ仕事してるのって大きいよなぁ”って、涼真が言ってたから」
一言一句覚えている自分が恥ずかしい。それくらい、耳について離れないでいた。
「なんだ、そのことか」
「っ、なんだって……」
「それは、その背が小さい後輩のこなっちゃんに言った言葉だよ。あの子、新野さんの婚約者だから」
「えっ!? 新野社長の?」
あの強面でいつ見ても真顔の新野社長が?
思い出して見れば、涼真を見かけたとき、新野社長はにっこりと微笑んでいた。それも、あの女性に向かって。
「そうだったんだ……」
新野社長の笑顔の理由がわかり、納得する。
「そ。いろいろふたりのエピソードとか聞いてて、“いいですね、おアツいですね”的な意味でいったの。全っ然、“うらやま~”なんて思ってないからね?」
「私が勝手に決めつけてたんだね」
もう、そういうのはやめようと思っていたのに。