俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「涼真、あの……ありがとう」
「なんのお礼?」
本当に心当たりがないとばかりに、目を丸くして首をかしげる。
「上崎さんにキツク言ってくれて。……私を大事にしたいって言ってくれたことも嬉しかった」
照れくさくて、ちょっと上目遣いになりながら見つめると、涼真は眉を垂れて笑った。
「その顔、ずるいって」
私の頭をふわりと撫でてくれると、手を取られた。
「それより、気分変えよう。あんなヤツにデート台無しにされたくないし」
「あ、待って……!」
多くの人が行き交う歩道を駆け足で通り抜ける。途中で足がもつれそうになったけれど、走るくらいのほうが今の暗い気分を吹き飛ばすにはちょうどよかった。
それにしても、誰が上崎さんにありもしないウワサを……?
頭の中にはまだその疑問と不安が残っていた。
涼真に手を引かれて駅近くのパーキングへやって来ると、多くの車の中でも一際大きく目立っていたSUVのドアを開けてくれた。
この車とまったく同じ車種とグレードの支払い処理をしたことがあるけれど、結構な金額だったように思う。
ただ、日本車でどんな道でも力強く走りそうな性能重視であるところは彼らしいような、そうでもないような。
たぶん、涼真のことをちゃんと知る前なら、もっと派手だったり、女性から好かれそうな高級車をイメージしたかもしれない。