俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛

意気揚々とハンドルを切る涼真の隣で、私は彼に伝わらない程度に肩を落とした。

「ううん、全然。あんまりルールとかわかんないし、サッカーに限らずほかのスポーツでもちょっとテレビで観るくらいしかしたことないんだよね」

テレビでもオリンピックのときに観るくらいで、巷がワールドカップやら世界選手権やらで盛り上がっていてもついていけないし、ついていこうとすらしていない。

私みたいな、よくわかっていない人が観ても楽しいのかな?

あまり乗り気になれずにいると、私の様子をチラリと横目でうかがってきた涼真がひざに置いていた手を優しく握ってきた。

「俺も正直詳しくはルールわかんないんだけど、前に一回観たとき楽しかったよ。ね、一回観てみない? 案外楽しいかもよ。つまんなかったら次はデートから外すし、途中で出たって構わないんだから」

「涼真……」

それもそうか。何事も絶対楽しまなければいけないわけじゃない。それに、楽しめないかもと思っていることだって決めつけかもしれない。

「そうだね、じゃあ……試しに行ってみたい」

「そうこなくっちゃ。実は俺の友達が選手で活躍してんの。かっこいいから応援してあげて」

「えっ、サッカー選手の友達がいるの?」

サッカーのルールがわからないくせに、友達はプロなのか。交友の幅広さは把握したつもりだったけど、やっぱり驚かされてしまう。

「うん、何年前かな? 先輩に連れて行ってもらったバーで飲んでたら、サクッと友達になっちゃって。それからの付き合い」

「サクッて……」

「サッカーについて訊いてたら、すごい教えてくれるんだよ。めっちゃいいヤツ。チケットもそいつからもらったんだ」

スタジアムの駐車場に停め、「はい」と差し出されたチケットはスタジアムに縁がない私でも前列だというのがわかる番号で、その友達からも涼真は“いいヤツ”だと思われているんだとわかった。


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