俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
涼真が掛け声などを訊いてくれたおかげで観戦は想像以上に楽しかった。
涼真の友達である選手がゴールを決めてファンにアピールをしたあと、涼真のことを見つけて挨拶してくれた。それに応える涼真が嬉しそうで、私まで楽しくなって来てよかったと思えた。
「どうだった?」
車に乗り、スタジアムの駐車場から出たところで涼真がたずねてくる。窓の外ではさっきまで一緒に応援していたユニフォームを着たファンたちが、茜色に染まりつつある道を歩いていた。
なんだろう、手を振りたくなるような仲間意識さえすでに芽生えている。同じものを一緒に応援するってすごい。
「あんなに楽しいなんて思わなかった。あと、自分がスポーツに熱くなるんだっていうこともはじめて知って、びっくりしちゃった」
相手から攻められているときはほかのファンと一緒になってヤキモキし、ゴールが決まれば涼真とハイタッチして喜んだ。
テレビでもこんな風になにかのスポーツや特定の選手やチームを応援したことなかったのに。
スタジアムの雰囲気だろうか、それとも何事も楽しめる涼真といるからだろうか。
「次のデートは観戦じゃなくて、スポーツしちゃう? サッカーじゃなくても、テニスでもバスケでもいいけど」
「スポーツかぁ……そんな体力あるかな」
ボールもラケットも、どれもしっくりこなくて苦笑する。
「ま、気が向いたらしようよ。ほかにも行きたい場所とか、見たい景色、食べたいもの……百音と一緒にしたいこといっぱいあるし」
赤信号で停まると、ぽんぽんと頭に手を置き、じっと見つめられた。