俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「百音もなにかあったら言って。大勢の女子が好きなものはなんとなくわかるし、それなりに喜ばせる自信もあるよ。けど、百音が一番好きなこととか楽しいことってまだちゃんとわかんないから。“それなり”じゃなくて“すっごく”喜ばせたいから。ちゃんと言って?」
「……うん、わかった」
涼真の力強い瞳に、胸がときめくのを感じながらうなずいた。
ちゃんと私を見ようとしてくれている。それはさっき、上崎さんからかばってくれたときにも伝わってきた。周りのウワサじゃなく、私を信じると言い切ってくれた。
楽しいばかりですっかり忘れていたけれど、ふと頭に上崎さんに変なことを言った人物が気になってきた。
元カレに銀行員がいただろうか。それとも、この前の飲み会で実は知り合いがいたのだろうか。
「……ね、百音?」
「あっ、ごめん!」
ぼんやりと窓からの景色を見つめていたら、涼真から声をかけられていることに気づかなかった。
「ちょっとドライブして、ご飯でも行こうかと思うんだけど、なにか食べたいものってある?」
「んー……そうだなぁ」
この前はスペイン料理、その前はみんなで居酒屋。イタリアンは普段から愛海とよくランチで食べに行ってるし……。
「和食、とかかな」
「お、いいね。了解。それじゃ、ついでにおいしいお酒もあるとこ行こうか」
すぐにどこかのお店を思いついたらしく、路肩に停めて予約の電話を入れると、ふたたびスマートに走りはじめた。
「予約もできたし、ちょっとだけ走ろうか」
車線変更し、細い道を抜けたかと思ったら山道を走り、景色がきれいに見下ろせる広い道に出た。