俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
迷っていると、事務所のドアが開いて笹倉さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
一応、声をかけるものの無言の会釈のみで返事はない。いつものことなので、私たちも気に留めなかった。
「今度、お医者さんが集まるパーティーに参加しようかと思ってて」
笹倉さんが帰ってきたことには構わず、愛海が話を続ける。
「えー、ちょっと高嶺を狙いすぎなんじゃない?」
「なに言ってんの、百音だってスーゼネじゃん。私も職業も収入も安定してて、顔面偏差値が超絶高い男と付き合いもの」
愛海は拗ねたように唇を尖らせ、野菜ジュースをゴクゴクと飲み始める。
「まぁ、条件ばかりじゃなくて相性もいるからね」
そう言って愛海をなだめていると、視界にこちらをチラチラと見ている笹倉さんが目に入った。
「ね、ちょっと声のボリューム落としたほうがいいかも」
「なんで?」
キョトンとしている愛海に、「笹倉さんが……」とアイコンタクトで知らせる。
「なるほど。もう、あの人怖いよね」
「うん……」
でも、もしかしたら私たちのことをうるさいと思っているのではなくて、べつの理由があるのかもしれない。仕事で伝えておきたいこととか、私たちの近くにあるモノを取りたいとか。
「……私、ちょっと聞いてみる」