俺だけのもの~一途な御曹司のほとばしる独占愛
「へ? なにを?」
キョトンとしている愛海をそのままに、席から立ちあがると笹倉さんのほうへと歩き出した。
わからないことは、訊いてみる。なんでも、決めつけちゃいけないんだ。
「あの、すみません……うるさくしちゃって」
私が近づくと、笹倉さんは肩をビクッと揺らして驚いた。
「いや、べつに」
「声の大きさ、考えますね」
「だから、うるさいなんて思っていない」
「でも、私たちのほうを……。あ、もしかしてなにか取りたい資料とか、言いたいことがありましたか?」
食い下がっていると、観念したように笹倉さんはメガネを中指で押し上げ、コホンと咳払いした。
「その……ちょっと、女性の好みとかに興味があったから」
「へ?」
堅物で女性にまったく興味なし、むしろ敵視しているかのような笹倉さんから思ってもみない言葉を訊いて、拍子抜けする。
「いや、ちょっと……す、好きな女性がいるんだが、どのようにして食事に誘えばいいか、とか。その、僕はあんまり女性と話すのが得意じゃなくて。だから、教えるときも早口になってしまう。本当はもっとゆっくり喋りたいし、わかりやすい言葉で説明できたらいいんだが、頭がそこまで回転しないんだ」
そう説明してくれる口調も早口で、集中していないと聞き逃してしまいそうになる。
「わ、わかりました。そういうことだったんですね」