笑顔でいいの?
「咲も…………上がって。
………………………どうぞ。」

「お邪魔します。」

圭ちゃんに続いて、久しぶりの我が家に上がる。

いつもここには……私だけだった。

私だけの空間に………私以外の人がいる。

もう……………私の家ではないと感じる程

あの頃の物はなくなっている………………。




廊下をぬけると

見覚えのあるキッチンが見えた。

ここだけはあの頃と変わりなく、そのままみたい。

母親が使うことのなかったキッチンは………幼い私の憧れで

いつかここに『ママ』が立って、ホカホカのご飯を食べられると

ずっと信じて待っていた。

…………………………懐かしい。

今は

豪華なマンションで、圭ちゃんが美味しいご飯を作ってくれる…………。

ここで初めて、圭ちゃんの存在を思い出した。

後ろを歩いていた圭ちゃんは

何も言わず、ポンと頭を撫でてくれた。

そう。

私には圭ちゃんがいてくれる。

彼氏になった圭ちゃんが……………。

さっきまで、全く受け入れられていなかったのに

スッと心に入ってきた。
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