笑顔でいいの?
ぬいぐるみのないリビング。

あの頃は、自分の部屋で生活することが悪い気がしていて

いつもこのリビングにいた。

子供部屋は………

私と咲々の、二人の部屋だから。

「どうぞ。」

私と圭ちゃんの前にコーヒー。

咲々の前には………

ホットミルクが置かれた。

…………………良かった。

赤ちゃん、産めるんだね。

インスタントのコーヒーは………

いつも圭ちゃんが淹れてくれるコーヒーよりも

美味しくないはずなのに……………

十七年かかって淹れてくれたママのコーヒーは………

何物にも代わることのない………格別な味がした。

「……………………………………美味しい。」

呟く私の頭を撫でて、そっとハンカチを差し出してくれた圭ちゃん。

ありがとう。

このコーヒーを飲んだだけでも…………

今日ここに来て、良かったって思うよ。
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