笑顔でいいの?
それから間もなくして、父親も帰ってきた。

玄関のドアの開く音が聞こえると

緊張から動悸が早くなる。

嫌な汗も背中に流れ、再び不安に苛まれた時

膝に置いた手を、そっと包んでくれる大きな手。

そっか。

一人じゃないんだよね。

圭ちゃんが、ここに来る前に告白してくれた意味が理解できた。

聡兄でも、両親でも…………咲々でもなくて。

圭ちゃんが私の居場所なんだね。

「お留守にお邪魔してすみません。
私、咲さんとお付き合いさせていただいてます………仁科圭哉です。
今日は、咲々さんにお願いして御挨拶に伺わせて頂きました。」

そう挨拶する圭ちゃんに

「ええっ!
やっぱり、圭哉さんって咲ちゃんの彼氏さんだったの!?
道理で、咲ちゃんを見る目が優しかったはずだぁ!!
咲ちゃん、良い人を見つけたね!」と

咲々がおおはしゃぎしてる。

「…………………………お父さん、ただいま………。
ご無沙汰してます。
勝手に出て行ったのに…………また勝手に帰って来て…………
すみません。
あのっ……………………」

圭ちゃんに続いて言葉を紡ぐけど…………

顔を見ることはできない。

きっと……厄介者が来たって思ってるはず…………。
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