私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
思いっきり背伸びをして手を伸ばす。
すぐに彼がその高い背をかがめてくれたので、ちゅっと唇を触れさせて離れる。

「こんな人目に触れるところでキスするとかダメじゃなかったのか」

意地悪く、ニヤリと佑司の右の口端だけが上がった。

「きょ、今日は特別ですよ」

自分らしくないTLヒロイン的行動は顔の熱を上げていく。

「もうちょっと充電させて」

いつの間にか私の背中は壁につき、私の顔を両手で挟んだ佑司にがっつり唇を食われた。
離れると、艶を帯びたオニキスが眼鏡の向こうに見えた。

「……これで元気に帰ってこられる。
あと頼んだな、チー」

ひらひらと手を振りながら佑司が去っていき、見えなくなってようやく、なにが起こったのか把握した。

……これだから、スパダリ様は。

でも、これで佑司が元気になれたんならいい。
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