きみのひだまりになりたい
あれが才能ではないのなら。
「運動神経がいいだけじゃレギュラーにはなれねぇよ。ここに入学したのも、スポーツ推薦じゃなくて一般だったし」
どれだけの努力を重ねてきたのか。
人より何倍、何十倍……それ以上の熱量が必要だったはずだ。野球にくわしくない素人の想像をはるかに超える過酷な道だっただろうに。そもそも、それをできることこそが才能だと、自負してほしい。
けらけらと喉仏を転がしながら、小野寺くんは後頭部を掻いた。
「中学は、3年のときしか出場してないんだ。あいつ――朱里の代わりだった。あんときはボロボロだったな」
「そうだったんだ? なのに今は1年からスタメン入りって、ひかえめに言ってやばくない!? 下剋上じゃん!」
「だろ? けっこうがんばってきたから、レギュラーに選ばれたときは泣いたぜ」
「しかも練習試合は圧勝でしょ? すごいよ朝也! すんばらしいよ!!」
拍手喝采を浴び、小野寺くんの口から白い歯がのぞいた。
中学のころ、部活を引退したあとも、受験勉強と並行してトレーニングを続けていたらしい。けっこう、ではなく、そうとうな練習量を積んでいるにちがいない。
泣いたぜ。あの言葉は形容でもなんでもなく、事実なんだろうな。
「うちの中学は、すげえやつがいっぱいいてさ。朱里も、そうだった。あんときは一緒に戦えなかったけど……今なら」
今なら。
もう代わりじゃない。
肩を並べられる。
背中をあずけられる。
強くなれた、今だからこそ。
だけど。
「だけどあいつはチームにいねぇし、無視しやがるし。……くそくやしかった。あいつのすごさを、俺は誰よりも知ってるのに……」
「小野寺くん……」
「朝也も木本朱里のファンなんだね」
「ファン……。はは、そうかもな。おれ、あいつのプレーが、好きだった」
苦笑いをした小野寺くんの眼差しが、凛々しく光る。きらきら、と純粋無垢に表現するには少し、ほの暗く翳っていた。
「なあ、田中。あいつに伝えてくんね? おれだと避けられちまうからよ」
――大会を勝ち進んで、待ってっから。
わたしたちは、ずっと待っている。待つ側にはとうに慣れてしまった。ときおり急かしてしまいがちなじれったさは、心の一部になりかけているといっても過言ではない。いや、過言かも。
ここまできたら忍耐強く待っていようと思う。小野寺くんも同じ気持ちなんだろう。
いつまでも同じ場所に居るから、好きなだけ逃げておいで。