闇に溺れた天使にキスを。



「それならもっと、白野さんのことを教えて」


突然、甘く誘うような声へと変わる。


「そしたら付き合える?」
「……どうして、私なんかと」

「白野さんを早く俺のものにしたい。
染めたくてたまらなくなる」


流されたらダメ。
あとから自分が後悔するだけ。

疑うのはいけないけれど、その言葉は到底信じられない。


「……信じてくれない?」
「うん」

「じゃあ白野さんが俺と付き合ってくれるまで頑張るね」


頑張る…そこまでして、私と付き合いたいの?
けれど神田くんと私だなんて、絶対に釣り合わない。


ヤクザの若頭。
高く危険な地位に立つ彼の恋人。

やり遂げられる自信がないし怖い。


「頑張らなくていいよ」

「無理だよ、そんなの。
だって白野さんはもう、俺を夢中にさせているから」


夢中だなんて、そんなことを言われても。

私のほうがきっと夢中になって、彼に翻弄されている気がする。


「そんなつもりないもん。
だからこの話は終わり」

「あれ、強制終了させられた」


彼の口から放たれる言葉が恥ずかしくて、つい終わらせてしまうけれど。

これ以上話されなら心臓がもたない気がして、話を終わらせたことに後悔することはなかった。

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