闇に溺れた天使にキスを。
「……私たち、付き合ってないのにおかしいよ」
嫌じゃないって自分でもわかっている。
それなのに、つい言い返してしまう私。
ここでもし折れて、前のような関係に戻れば。
寂しい思いをするのは自分なのに。
「じゃあ付き合おう」
「え……?」
あまりにもさらっと言われたものだから、聞き間違いかと思ってしまう。
「白野さん、俺と付き合おう。
それなら完全に俺のものだ」
優しい眼差しを向けられるけれど、まっすぐ見つめ返せない。
だってつきあう、だなんてそんな簡単に言われても困るだけだ。
「や、やだ…」
「どうして?」
「そんな軽い告白は信じない」
もっと雰囲気漂う状況で言われたい。
そうじゃないと信憑性が欠けるし、神田くんが私のことを好きなわけがない。
意地悪だし、私の反応を見て楽しんでいる。
彼にとって私は、おもちゃのようなものだろう。
「軽くないよ、本気」
「こんなところで言われても、本気なわけがない…。
それにまだ私たちが関わるようになって、そんなに経ってないもん」
「時間の問題?」
「まだお互いのこと全然知らない…」
だって、神田くんはヤクザ。
それはとっても危ない人、ということだ。