闇に溺れた天使にキスを。



これは単なる深読みにすぎないのに。
戸惑って、頭が混乱して。

うまく思考が働かない。


次に神田くんを会った時。
どんな反応をすればいいのか。

わからないし、そもそも今まで通り接することなんてできない。


昨日、見え隠れしていた彼の深まる謎が。

より一層深く、さらに深く、それから暗闇に近づいたような気がした。


そう、これは私なんかが容易に近づいてはいけない。
彼との境界線を無理矢理越えてしまったかのようで。


忘れなければいけない。
さっきのことも、昨日のことですら全部。

もっと彼のことを知りたいと、少しでも思ってしまったからだろうか。


こんなことになったのは。


教室に入る前、一度頭を横に振った。
もう忘れたんだ、と自分に暗示をかけるため。

必死でさっきの光景を忘れようとしていたけれど───


彼が、それを許してくれなかった。

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