next season
部活帰り。
同じく練習だった女バスとかぶると囲まれる前に颯太は携帯を取り出す。
「うん、今終わったよ。」
律儀に帰宅報告かよ、あほらしいと後ろから眺めてると
颯太のすぐ後ろ、女バスのキャプテンの翠から怨念みたいなオーラが湧き出ていて思わず吹いた
「翠ー、顔が般若みたいになってっけど。」
「・・うるさいな。」
元々キツイ顔がこっちを睨むと本気で般若だよ
こいつもよく飽きずもせずに颯太追いかけてるよなー、翠くらいの見た目があれば颯太までとはいかなくても十分イケてるのモノに出来るだろうに。
まあ、男の俺が颯太と彼女が不釣り合いだと思う位なんだから女のこいつからしたら余計そう思っているのかも。
周りは散々颯太と翠がくっつくんじゃないかと勝手に煽っていた。
俺も彼女の事聞かされるまではこいつとくっつくんじゃないかと思ってたしな
万人から受けの良い颯太は
誰から誘われても体よく断る術を持っていた。
余りにも断られ続けて、実は俺とデキてるんじゃないかとかな
ある日、ふいにあの幼馴染が彼女だとさらりと言われて
周りの仲間連中、言葉が出なかったし。
確かに彼女が居てもおかしくないと皆思っていたけど・・あの幼馴染とは驚いた。
その噂は瞬く間に広まって、
俺等同様、信じらないという反応ばかりだった。
彼女と言われてるそいつは・・良く言うと彼女面しない
噂が広まっても颯太と話しているのを見た奴はあまり見ない。
大人しい、と言えば体裁は良いが相手はあの颯太だ
不釣り合いというか純粋に俺は不思議だった、どうしてあの女?いや颯太にすぐ聞いちゃったけど。
幼馴染っつーからには何かしらあるとは思うし、実はアッチの方が最高とか?ってノリで笑った事あるけどよ。でも温厚な颯太に睨まれたらそれ以上つっこめなかった。
学年一モテる颯太の彼女が凡人で何考えているのか解らない
だから颯太を好きな女は変わらず騒ぐし、翠みたいにいつまでたっても諦めきれない女も居る
こればっかりは仕方無いよなあ
「・・・貸しひとつ作ってやろうか?」
翠の耳元で言うと、切れ長な眼が訝し気に俺を見上げる
良い女なんだけどなー
胸でけえしスタイル良いし、男慣れしてるんだったら是非お相手願いたい
「貸しって何よ・・・、」
でも颯太に熱い視線を送っている時点で、恋する乙女だろうから手は出さない。
後々面倒くさそうな女に興味はない
「颯太とお近づきになりたいだろ。」
翠に笑った
そう、こいつなら颯太のバスケ馬鹿を邪魔したりしない
「あとその問題集だろ?うん、来週になったら早いから・・・」
前で呑気に彼女と話してる颯太の肩に腕を回した
「俺もっ、俺もテスト勉強何もしてないっ。」
携帯に向かって叫ぶ
颯太の驚いているであろう顔は知らんぷり。
「参ったな~、超焦る。」
おい。
後ろの翠に視線を送る
目が合うと、数秒固まっていた翠が瞬きをしてこっちに飛んできた
「私もっ、私も何もしてないっ。颯太キャプテン助けてっ、」
はい。よく出来ました
「何だよお前等っ・・」
「だって部活頑張り過ぎて手がつかなかったんだよ~、」
「そうよ、頑張るキャプテン同士じゃない。」
「ひでーなあ、自分達だけ良い点なら良いのかよ~。」
左右からステレオ状態でまくし立てる
来週から定期テスト前でアレだろ?
部活ない時間、仲良く一緒にテスト勉強♪なんだろ
彼女からしたら待ちわびた時間なんだろうね
「ごめんな、・・え?いや、だって・・」
戸惑う声の颯太。
「良いのか?だって一緒になんて・・」
携帯に向かって焦ってる。
思わず口角が上がる
だよな。
颯太に好きだと寄って来る女にだって無関心な彼女
俺と翠を断る事なんて出来る訳がない
颯太、お前だってそうだ。
本当に彼女が大事なら俺達を断れば良いだけの話だろ
お前のそんな曖昧な態度からだって、俺は大した事ない女なんだと思うんだよ