天然たらしが本気を出す時。






「七瀬くん!」


いつも七瀬くんが降りる駅で 彼を見つけ走る。

今日は土曜日。
つまり、七瀬くんの弟くんに会う日なわけだ。


「あ、橘さん。
来てくれてありがとう。行こっか」

「うん!」


七瀬くんの弟くんか。
楽しみだけど緊張するなあ。
初対面でいきなり嫌われたりしたらどうしよう。




「弟、コウっていうんだ。家着いたら名前呼んでやってよ。結構人見知りなんだあいつ」


「コウくんかあ。わかった!何歳なの?」


「5歳」


5歳なんだ。

5歳っていうと、言葉の理解が出来てる頃だから自分の感情をちゃんと口に出せる子が多い。

ということは、だ。

もしもコウくんに気に入られなければ
ブス!嫌い!と言われる可能性も少なからずあるわけだ。


ああ、心配になって来た。
どうしよう、綺麗なお姉さんが来るとか期待されてたら。お面とか持ってきた方が良かった!?

と、心配していたのだけれど
その必要は全くなかった。








なぜならコウくんは七瀬くんと同じDNAを持っているのだから。











「ここだよ」

七瀬くん宅は小綺麗な一軒家だった。

お母さんの趣味なのか、庭がとても可愛らしいのが印象的だ。


「どうぞ、入って」

扉を開けてくれる七瀬くんに

「ありがとう、…お邪魔しますっ」

と言って玄関に足を踏み入れた瞬間




「かな兄…!おかえりっ」


バタバタと七瀬くんの元へ走ってくる1人の
…………美少女…………!
いや、違う!間違えた!
美少年!!


もちろんその美少年はコウくんで、彼はまだ靴も脱ぎ終わっていない七瀬くんに抱きつき「えへへっ」
とニコニコ笑っている。



なにこの絵面…。

美少年と美少年。いや、天使と天使?

絵になりすぎて、まるで外国の映画を見ている気分になった。


コウくんも七瀬くん同様、色素が薄くて
髪の毛が金に近い茶色で、目も茶色い。

思わず撫でたくなるようなふわふわの髪に、くりっとした可愛い瞳。






なんか、めっちゃ愛でたい!





ほら、実際七瀬くんもめちゃくちゃ愛おしそうに「留守番えらかったな」ってコウくんの頭撫でてるもん!

< 50 / 189 >

この作品をシェア

pagetop