インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
電車を降りたあとも他愛ない話をしながら二人で歩いた。

会話をしている間も私の頭の中では、明日は尚史と手を繋いで歩くんだなとか、どんなことを試すんだろうとか、尚史は私に触れることに抵抗はないのかなという考えがグルグル巡る。

「あのさ……いまさらなんだけど、私と手を繋いだりするの、尚史はなんとも思わないの?」

尚史は私の言いたいことがよくわからなかったようで、軽く首をかしげながら私の方を見た。

「なんとも思わなくはないけど……なんで?」

「だって……好きでもない相手とカップルのふりするなんて、正直言ってあまり気持ちのいいもんじゃないでしょ?」

好きな女の子ならともかく、私の男性への苦手意識を克服させるために触れるなんて、あまり楽しいものではないと思う。

相手は幼馴染みの私だから余計な気を遣う必要はないとしても、幼馴染みだからこそやりにくいこともあるんじゃないだろうか。

尚史は通り掛かった自販機の前に立ち止まり、缶コーヒーを2本買って、そのうちの1本を私に差し出した。

「気持ち良くないとかは思わないけど……俺も一応男だから、俺のせいでモモが余計に男嫌いになったらどうしようとは思う。俺よりモモはイヤじゃないの?」

「うーん……今のところイヤだと思ったことはないな。尚史だから安心っていう気もする」

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