インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「ホント無自覚……」

「……何が?」

「こっちの話。とりあえず、氷の借りは返したってことね」

「そういうことだな」

尚史のことは小さい頃からよく知っているはずなのに、なんだかだんだん行動が読めなくなってきた。

もしかしてこれも私の男性に対する苦手意識を克服させるための作戦的な?

そのために尚史はいつもより頻繁にイケメンキャラを発動させ、過去の恋愛で身につけた女子の胸をキュンとさせるノウハウを駆使しているのでは?

幼馴染みの尚史相手にこんなにドキドキするのなら、私は他の男性と付き合ったら心臓発作を起こして天に召されてしまうのではなかろうか。

デートって……恋愛って恐ろしい……!

そうか……だからキヨは私に、『尚史に慣らしてもらえ』って言ったんだな。

キヨはきっと尚史が私の幼馴染みであることや、無自覚イケメンであることも考慮して、その役目は尚史が適任だと思ったのだろう。

だったら尚史が無自覚イケメンだって言うことも、事前に教えておいてくれたら良かったのに。

いや、不意打ちで来るから意味があるのか?

とにかくこれからは、いつイケメンを発動されてもうろたえないように、最大限の心積もりだけはしておこう。


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