インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
話を適当に切り上げて、店の外で尚史を待つことにしよう。

「さぁ……どうかな……。私はなんとも……」

言葉を濁して、並んでいる雑誌を表紙もろくに見ないで適当に3冊ほど手に取り、『友達と待ち合わせをしているから』と言おうとしたとき、背後で人の気配を感じた。

振り返って確かめなくてもそれが誰なのかハッキリわかる。

この頭上からの圧の強さは間違いなく尚史だ。

しまった、間に合わなかったか。

このまま振り返らずにスルーしようか、仕方がないから『じつは私たち幼馴染みなんだ!』と開き直った方がいいのかと悩んでいると、谷口さんが私の後ろを見上げて、漫画みたいに『パァッ』という効果音がしそうな全開の笑顔になった。

「中森さん!お疲れ様です!今お帰りですか?」

「え?あ……はい……」

よく知らない女の子に突然声をかけられた尚史のうろたえぶりが伝わってくる。

私やキヨたちと一緒にいるときとは大違いだ。

「奇遇ですね、私も今帰りなんです!もし良かったらこれから一緒にお食事でもいかがです?」

本当に積極的だな、谷口さんは。

こんな鋼のように強靭なメンタルを持っていたら、毎日楽しくてしょうがないだろう。

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