インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
電車を降りて改札口を通り抜けると、尚史は私が右手に持っていた本屋の袋を左手で取り上げて右手に持ち替え、空いた左手で私の右手を握った。

日を追うごとに慣れてきたとは言え、手を繋いで歩くのはまだ少し照れくさい。

「本、ずいぶんたくさん買ったんだな」

「ちょっとね、なりゆきで……。ごめん、重いでしょ?自分で持つよ」

「いい、重いから俺が持ってやるよ。そういえば……さっき本屋で話しかけてきた人、モモの知り合い?」

尚史はやっぱり合コンで谷口さんと会ったことは覚えていないらしい。

本屋で知らないふりをしてしまったことは謝っておいた方がいいかな。

「うん、私の会社の後輩の谷口さん。合コンのときにもいたんだけど、覚えてない?」

「全然覚えてない。食べた料理ならだいたい覚えてるけどな。で、なんでモモは俺を置き去りにしようとしたわけ?」

谷口さんが『結婚してもいい』と思うくらい尚史を気に入っているということを、私の口から伝えるのはどうなんだろう?

谷口さんは積極的にアタックできる人だし、私が尚史に余計なことを言ったら、そのせいで谷口さんがイヤな思いをする可能性もあるから、下手に口をはさまない方がいいのかも知れない。

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